2020年09月05日
日本から一番近い国、韓国。遠い昔から、文化的にも政治・経済的にも、私たちの国と密接な繋がりを持っていますが、意外と知られていない伝統的なしきたりが残っています。
韓国を訪れてまもなく気付くのは、人々の年長者に対する礼儀の良さです。電車に乗っていて年配の人が自分の前に立つとすぐに席を譲ります。またレストランでは、同じテーブルの年長者が料理に箸をつけるまで他の人は箸をとらずに待っています。食事が終わり席をたつのも年長者が先です。日常のあらゆるシーンで、目上の人を敬う姿勢が貫かれていて、それは韓国の人々の道徳観の基本に儒教の精神が生きているからといえます。儒教はもともと中国の孔子が説いた教えですが、韓国では十四世紀後半から二十世紀初期まで続いた李朝時代に国教として定められ、政治や思想に大きな影響を与えています。
信仰の自由が認められ、仏教徒やキリスト教徒が多い現在の韓国でも、儒教は葬儀や祭事と深く関わっています。たとえキリスト教徒であっても、葬儀の基本部分は儒教式で行う人がいるように、儒教は宗教と言うよりも人々の生活規範となっています。儒教の教えでは、自分を生み育ててくれた親を尊敬し、その恩に報いることがとても大切なことだと説いています。盛大な葬儀を行い、立派なお墓を建てることは、韓国人にとって祖先を崇拝し、礼を尽くすことにも繋がっています。